辞めることは先に進むための「戦略的撤退」

厚生労働省によると、2018年度、全国にある総合労働相談窓口に寄せられた相談のうち、個々の労働者と事業主との間のもめごと(民事上の個別労働紛争相談件数)は約26万6500件です。

その内訳を見てみると、もっとも多いのが「いじめ・嫌がらせ」で約8万3000件です。続いて、「自己都合退職」が約4万1000件、「解雇」が約3万2600件となっています。

解雇に関する相談が減っている一方で、「辞めたいのに辞められない」といった退職をめぐるトラブルは増えていて、ここ10年間で2倍以上になっています。かつて、労働相談といえば解雇という時代がありましたが、それも今は昔の話です。

職場にはいじめや嫌がらせが蔓延し、そこから逃げたくても逃げられない……そんな社会でみんな、一生懸命、働いているわけです。

退職代行というサービスは生まれるべくして、この国に誕生したのです。

ただ、パワハラなどに苦しみ、一切会社と関わらずにすぐに辞めたいという人を支援する体制があれば、その方法はなんでもいいのです。

いちばんいいのはユニオン系の団体が退職代行を行うことでしょう。ユニオンは会社と交渉できることが強みとなるはずです。残念ながら現在の労働組合は労働者から頼りになる存在だとはあまり思われていないようですが、退職サポートに力を入れることで、そのイメージも変わるかもしれません。

ただ、それを待っている時間はありません。

退職代行は、すべての働く人にとっての「武器」です。そして、その武器は、小さな個人でも、みんなに配ることができるものです。望むのは、日本で誕生した退職代行がメジャーな存在になり、そして、退職を考える人の脳裏に、退職代行が選択肢として当たり前のように浮かぶようになっていることです。そして、「辞めたいのに辞められない」という人が、いなくなっていることです。

「会社を辞める」という当たり前の労働者の権利があり、逃げること、辞めることは先に進むための「戦略的撤退」です。