退職代行業者から会社に電話がかかって来たら

退職代行の広がりとともに、企業サイドから戸惑いの声も上がっています。退職代行業者から会社に電話がかかって来たら、人事担当者は「どうしたらいいのか?」思う方もいるでしょう。

退職代行という名前は聞いたことがあっても実態がわからない、あるいは、その存在自体、知らなかったという方もいます。この先、代行業者を使っての退職は増えていくはずで、企業側も退職代行への対処法を心得ておく必要があります。

ポイントは、どういう事情があるにせよ、「諦めざるを得ない」ということです。ある日、いきなり退職代行業者から電話がかかってきて、部下の退職の話を聞かされたとしましょう。寝耳に水のことに混乱し、「なぜだ!?」、「今まで面倒見てきたのに!」、「無責任な!」と怒りがこみ上げてくるかもしれません。

あるいは、従業員の「辞めたいんです」という言葉をのらりくらりとごまかしたり、引きとめてきたなら、「やられた……」と思うかもしれません。

その憤りや戸惑いの矛先が、電話口の代行業者に向くこともあるでしょう。業者を怒鳴りつけて溜飲が下がり、気持ちが収まるのであればそれでいいです。依頼者がスムーズに辞められることがいちばんですので、業者は黙って怒られるはずです。

しかし、怒りに任せて、代行業者を無視してもいいことはひとつもありません。

「直接連絡してこないのはあり得ない」と憤り、「会社に来るように本人に伝えろ」と言われれば伝えますが(代行業者によっては、面倒だからとこうした伝言を伝えるふりをして伝えないところもあります)、「会社からの伝言を受けたから仕方がない」と出社する人はあまりいません。わざわざ万単位の料金を払ってまで、「会社に行きたくない」と決めた依頼者の気持ちが変わることはないのです。

仮に無視されても、無期雇用の場合、2週間が過ぎれば、ハローワークで雇用終了の確認請求をして、役所で手続きをすれば退職は完了します。

一方、会社側にとって代行業者を無視するということは、元従業員との連絡手段を失うことになります。業者との連絡を拒めば、引き継ぎがうまくいかず、会社に必要以上の損失が生じる恐れも出てきます。