退職代行業者はどうやって仕事をするのか

退職代行は具体的に何をするのか?
ここでは、退職代行は具体的に何をしているのかをご紹介します。

退職代行の流れ

退職代行業者が依頼者から、LINEやメール、電話などで、「会社を辞めたい」「今日から出社したくない」といった依頼を受けた場合、雇用契約の種類によっては代行できないケースもありますし、いくらノウハウがあっても、「即日退職すること」「二度と会社に行かなくていいこと」を100%保証することはできません。これについて説明して納得できたら、退職代行に入ります。

簡単に流れをまとめると、以下のようになります。

1.依頼者の情報と料金支払いの確認(正式な依頼)
2.指定の日時に勤務先へ電話
3.依頼者が退職届を送付(貸与物の返却なども含む)
4.退職届が到着
5.勤務先が退職に関する書類(離職票など)を送付

いちばん重要なのが、勤務先への電話

いちばん重要なのが、2の勤務先への電話です。
退職代行業者は、「自分でなかなか言い出しにくい方から依頼を受けて、退職に関する連絡を代行している会社であることと、〈依頼者〉さんからの伝言を届けるということ」を、人事担当者に伝えます。

〈依頼者〉さんから退職に関する伝言をお預かりし、それをお伝えします。
お伝えする内容は大きく3点あります。

1.〈依頼者〉さんが、本日、退職届を御社に向けて郵送したとのことです。〇〇日までには到着するはずなので、到着次第、確認してほしいそうです。

2.〈依頼者〉さんは現在、精神的な不調により、退職日までの間は出社が難しい状態とのことです。あくまで、会社に原因があるわけではないとも聞いています。

3.退職にあたり、会社の方と直接コンタクトをとりたくないということで、会社の方と直接会ったり、電話をするのではなく、郵送でのやりとりであれば直接対応するそうです。

おそらく会社としても、本当に〈依頼者〉さんが依頼したかなど、今の時点では確かめようがないこともあると思いますので、とにかく一度退職届を確認してください。

何か〈依頼者〉さんにお伝えする事項があれば、退職代行業者にご連絡ください。
伝言の内容は以上です。

伝えるのは「退職届」の提出

この電話内容の中にはいくつか、ポイントがあります。

まず、「伝言を届ける」の一文です。これをあえて言うのは、退職希望者が代行業者に細かく指示をしている、という印象を相手に与えるためです。退職代行業者としては「ただ伝言を頼まれているだけ」ということをわかってもらうという意味があります。

退職代行業者は、依頼者に代わって退職の意思表示をすることはありませんし、他社の従業員の勤怠を管理する権限は一切ありませんので、あくまでも本人が出社できる状態ではないらしい、ということを伝えるまでです。

退職の意思表示を代わりに行うと、「非弁行為」という法律違反になる可能性があるのです。

業者によって対応はいろいろですが、退職代行業者の仕事の範疇を超えないよう慎重に行なった方がいいでしょう。

依頼者の意向は、基本的に退職届や手紙で確認してもらいます。伝えるのは、「退職届を出した」ということだけです。本人による退職届の提出があくまで意思表示となるのです。

ただ、会社には「退職届を御社に向けて郵送した」と言うのですが、実際にはこの段階ではまだ送付していないことがほとんどです。ウソをついているということには、それなりの理由があります。

ひとつには、退職届の提出方法などに会社から細かい注文をつけさせないためです。そして、引きとめの余地がないと諦めてもらうためです。もし、「退職届をこれから送付するそうです」と言ってしまうと、「だったら、本人に直接持ってくるように伝えて」と言われる可能性を残してしまいます。

また、退職にあたって必要となる書類のやりとりについて、「それはこっちに送って、あれはあっちに送って」など、会社からの煩雑な指示を受ける可能性が生じてしまいます。

「郵送した」と言えば、「本当なのか?」と聞かれることはありますが、会社に電話を入れたその日のうち、あるいは翌日には、依頼者から送付する段取りになっていますので、ほどなく会社には到着するはずです。

発送が数日遅れた場合、「消印の日付が違う」という指摘をされることもありますが、会社側が日付に云々言うのも、おそらく、「腹立たしいから一言言っといてやろう」という程度でしょう。「すでに郵送済みだから」の効果は絶大ですので、これは必要なウソでしょう。

このときの電話では、退職届が送られたという事実に加え、会社とのやりとりは郵便のみで応対するが、代行業者が間をとりもつ、ということを知らせることが大切です。そのため、「直接コンタクトをとりたくない」と伝え、最後に、「何か〈依頼者〉さんにお伝えする事項があれば、退職代行業者に連絡ください」と念を押します。

依頼者は、会社からの電話やメールには応対しないのがおすすめです。会社に拒絶の意志を伝えるには、電話やメールがまったくつながらず、一方的な送信しかできない状態のほうが効果的ですし、事実、会社側も諦めやすくなります。

会社から拒絶された場合

退職代行業者が会社電話をかけたとき、退職に関する連絡を代行している者だと名乗ったとたん、拒絶モードに入る会社はもちろんあります。最初からまったく話を聞く気がなく、取りつく島もない場合は電話でこうつけ加えます。

「ただ、〈依頼者〉さん曰く、すでにもう本日、御社に向けて退職届を郵送したそうです。伝言をお受けないのは構わないのですが、説明なしに退職届が到着してしまうと、混乱してしまうのではないかと危惧しています。」

とにかく、退職届は送付された、ということだけは伝えるのです。そうすると話を聞こうとしてくれます(それでも、聞いてもらえないこともありますが)。

また、「直接連絡をとるから」などと言う場合は、本人が直接、話す意思がないこと、依頼者の自宅を訪問しても本人に応対する意思がないこと、連絡手段は代行業者しかなさそうだということを伝えます。

またときどき、「業者とは一切話さない」と電話を切られてしまうというケースもあります。

「それは自由ですが、依頼者〉さんは着信拒否されているとのことですので、何かあった際に退職代行業者の連絡先を控えておいたほうが、御社にとっても都合がいいのではないかということで、現在ご連絡しています」

「こちらとしては伝言を聞いていただくだけで十分です」

「電話もメールも見ないとのことですので、あとの手段としては自宅に伺うということしかないとは思われますが、これはほかの依頼者さんが過去にパニックになって警察を呼ばれたという事例がありますので、おすすめはできません」

電話を切られた場合

また、「業者とは一切話さない」と電話を切られてしまうというケースもあります。

経営者の力が極端に強くなっている中小企業に多いのですが、なかには全国に支店を展開する大企業もあります。その場合は、直属の上司が独断で行っていることがほとんどです。部下が辞めてしまうと自分の評価に関わるかもしれないと、心配なのかもしれません。

そのため、多くの場合、本社の人事部に直接連絡をします。直属の上司とやりとりをするよりもスムーズに進みやすいからです。

逆に、最初に本部に電話して拒絶されたら、勤務していた支社や支店に連絡をします。

それでもどうしても話を聞いてもらえないときは、退職届を送りつけて退職日を待ちます。退職届は、送りっぱなしでも2週間たてば法律上は辞めたことになります。退職届が到着すれば、会社は基本的に受理するしかありません。

そのため、ほとんどの場合、電話で一通りの説明が終わると「わかりました。まずは退職届を確認します」と言って、電話は切れます。突然の退職や従業員が自分で言わないことに不満があったとしても同じです。

退職代行を利用する際の「退職届の書き方」

会社側への電話が終わったら、退職代行業者は依頼者に内容を報告し、それを受けて依頼者が退職届を作成します。退職届は通常、どのような書式のものであっても効力があります。

退職理由は「一身上の都合」でもかまいませんが、「精神的な不調」がおすすめです。精神的な不調は、実際にケガなどをする必要がないので、体調不良なので出社しての手続きができないことも正当化することができるからです。

また、会社を辞めたことを親に知られたくない場合、あるいは、会社が嫌がらせで親に連絡を入れそうな場合、「家族の意向」や「家庭の事情」などと書くといいでしょう。すでに家族の了承を得ている、親も会社を辞めることは承知していると思わせることができます。

会社に対して、いろいろと思うところがあったとしても、穏便な理由にしておいたほうがこじれずに済みます。どうしても会社に思うところがあって憂さ晴らしをしたい場合、退職届に皮肉を書くよりも、すべての手続きが終わってから、転職サイトのレビューに書いたほうが効果的です。

退職届につらつらと恨み節を書いたところで、見るのは会社の人事担当者だけです。転職サイトのレビューでしたら、多くの人に伝えることができます。ただこれも、決して、おすすめするわけではありません。

退職届に記入する退職日は、民法六七二条一項に従って2週間後にするのが一般的です。その2週間は欠勤とするか、有給休暇を使うのがほとんどです。もし、有給休暇が消化しきれない場合は、退職日をずらして記入します。

ただ、退職日として記載した日がその月の最終日以降になる場合、社会保険料の期限の関係で会社側から「早めたい」といった提案が来ることがよくあります。これは事務的な話で、大きな問題ではないので連絡をもらってから対応します。

退職届には、本日以降出社できないこと、手続きのすべては郵便で行うこと、必要があれば代行業者に連絡してほしい旨を書きます。

退職代行利用時の「退職届の郵送の仕方」

退職届は退職願と異なり、本来受け取りを拒否することはできません。しかしそれでも、「内容証明」や「特定記録郵便」など、配達記録が残る方法での郵送をおすすめします。

「内容証明郵便」は、送付する文書の写しを郵便局に提出することで、いつ、どんな内容の文書を誰から誰宛に出されたかということを郵便局が証明してくれるものです。明らかなブラック企業を退職する場合は、内容証明を使うのがいいでしょう。

「特定記録郵便」は追跡番号で郵便物がどこにあるのかがわかりますし、手渡しで配達される簡易書留も会社が受け取ったかどうか確認することができます。無事に届いたことがわかりますので、利用者側にとっても安心です。

ただ、オフィスに人がいない時間が多い会社の場合、簡易書留は再配達が手間になりますので、特定記録郵便で十分でしょう。

会社によっては、自社で決めた書式の退職届にもサインするよう求めてきます。その場合でも、ほとんどのケースで本人宛に退職届の用紙が返信封筒付きで送られてくるので、それに署名して、そのまま返信すればそれで終わります。無用なトラブルを招くよりも、素直に署名したほうがいいでしょう。

ただし、退職届に書かれている内容は必ず確認しましょう。たとえば、有給を申請したのにそれを認めず、退職日を早めるなど不当な改変がないとも限らないからです。

退職代行を利用するとき、必要な手続きはどうするか?

退職するにあたっては、いろいろな事務手続きやしなくてはならないことがあります。主なものは、担当業務の引き継ぎと会社からの貸与品の返却、保険などの切り替えに必要な書類の受け取りです。

書類については、退職後、転職先への提出が必要なものもあれば、ハローワークで失業給付を申請するときに必要となるものもあります。

【受け取るもの】

離職票:失業給付申請に必要
雇用保険被保険者証:雇用保険加入者であることを証明する書類
社会保険資格喪失証明書:健康保険の切り替えに必要
源泉徴収票:年末調整や確定申告に必要
年金手帳:(会社に預けている場合)年金に関する情報が記載された手帳

退職代行を使ったときは、こうした事務的なことはどうするのだろう?と思うかもしれません。こうした退職にまつわることについては、「退職に関する伝達事項」として書面にまとめ、退職届に同封して送りましょう。

事後のトラブルを避けるためにも、すべきことはキチンと行い、こちらからのお願いについては、まとめて依頼したほうがいいからです。それぞれの項目について、少し、補足をしていきましょう。

・離職票

離職票は会社を退職したことを証明する書類で、失業給付の受給手続きをするためにハローワークに提出するものです。ただ、失業給付は離職票があれば誰もがもらえるものではなく、条件があります。「会社を辞める前の2年間で雇用保険に入っていた月が12か月以上あること」という基本要件があり、加えて、自己都合での退社の場合、3か月の給付制限期間があります。

つまり、その間求職活動をしていても仕事が見つからなかった場合、失業給付金をもらうことができます。離職票は転職先がすでに決まっている人はそもそも必要ありませんし、多くの人にとって不要なのです。

会社としては、求められたら発行する義務があり、そのためには会社側からハローワークに「離職証明書」というものを提出しなくてはなりません。

毎月複数名の退職者がいるような会社ならいいのですが、会社としては余計な手間が増えてしまうだろうな、と思います。

本当に必要かどうかは代行業者の立場ではわかりませんので、特に依頼者に確認することはしません。

ただ、あとになって「やっぱり必要だ」となるものは、最初から希望したほうがいいでしょう。

・雇用保険被保険者証

会社に勤めるということは、会社の雇用保険に入るということです。給料から天引きで保険料を支払うことで、退職後、要件を満たせば失業給付を受給できるのです。「雇用保険被保険者証」は、その雇用保険の加入者であることを証明する書類です。雇用保険の加入手続きに必要で、転職先が決まったら新しい会社に提出します。

転職したら新しい会社の雇用保険に入ることになるので、一人にひとつ割り当てられている、自分の雇用保険番号が必要になります。厳密に言うと、番号さえわかれば雇用保険に入ることができるのですが、転職先で、「どうして、雇用保険被保険者証がないのか?」などと怪しまれることもあるので、もらっておいたほうがいいでしょう。

・社会保険資格喪失証明書

会社が加入している社会保険の被保険者ではなくなりました、ということを証明するもので、健康保険の切り替えに必要となります。

社会保険の資格喪失日は退職日の翌日なので、保険証はすぐに返却しなければなりませんが、社会保険に加入して2か月以上働いていれば、任意で会社の社会保険を継続する制度もあります。ただ、「任意継続」の場合、会社が負担してくれていた保険料が全額負担になるので、場合によっては国民健康保険より高くなることもあります。どちらがよいかわからない場合は、市区町村の国民健康保険窓口に相談してみるといいでしょう。

・源泉徴収票

源泉徴収票は、その年(1月1日~12月31日)に会社から支払われた給与額や天引きされた所得税の額を記載した書類のことです。転職先でも所得税を正しく計算する必要がありますから、再就職先の会社に提出します。多くの場合、退職日から約10営業日以内に依頼者のもとに届きます。

会社に行かず、引き継ぎをする方法

退職代行を使った場合でも、必要な業務の引き継ぎは行いましょう。会社に一度も出社せずに引き継ぎを済ませる方法としては、退職前に書面にまとめておいて最後の出勤日に机に残して帰ることです。あるいは、代行実施後に電子メールや郵便で送るといった方法があります。

一見、引き継ぐことがなさそうな場合や何を引き継げばいいかがわからない場合も、「わからないことがあれば、郵便か代行業者を通して聞いてください」と「退職に関する伝達事項」用紙に書いておきましょう。「引き継ぎをする気持ちはある」ということを示しておくことが大切です。

また、会社から借りていたものは返さなくてはいけません。貸与物の返却が遅れると、トラブルに発展し、対応が長引いてしまうことがあります。
会社に返さなければならないものには、次のようなものがあります。

・健康保険被保険者証

忘れてしまう人が多いのが、健康保険証です。近いうちに病院に行く予定がある場合はほかの貸与物のみを先に郵送し、保険証は退職日までに会社に到着するようにしましょう。退職日の翌日以降は使えません。もし、使ってしまうと返還請求という非常に厄介な手続きが待っています。

・身分証明書や名刺、社章

その会社に属している証明ができるものです。情報漏洩の観点から、取引先の名刺の返却を要求する会社もあります。

・通勤定期券

払い戻して返金するかどうかは会社によりますが、迷ったら定期券そのものを会社に返却して、任せるのが確実です。

・制服

クリーニングに出して返却することを求められることが多いです。

・社費で購入した事務用品、書籍など

会社から貸与されていたノートパソコンや携帯電話、鍵、業務で作成・収集した資料なども返却します。

一方、会社に置いたままの私物はどうなるのかというと、会社側に対応する義務はないので、絶対にもどってくるとは言い切れません。着払いでの郵送または処分をお願いするなど希望を伝えましょう。

退職代行では、会社と退職者は郵便でやりとりをするわけですから、荷物の返却や書類の送付などで、住所がバレてしまうのでは?と心配する人もいるでしょう。

例えば、セクハラが原因で辞めて引っ越しをしたという人で、絶対に住所を知られたくないという人のようなケースでは、郵便局の窓口で自分宛の郵便物を受け取ることができる「郵便局留め」を利用します。全国どこの郵便局でも指定できますので、自宅から離れた郵便局の局留めにすれば、新居の場所を推測されることもありません。

寮や社宅を利用している場合

寮や社宅を利用していた場合、立ち会いを求められることが少なくありません。

これについても、退職届が届く前に出てしまい、立ち会う意思がないことを示せば会社側は諦めます。家具などを残すと、処分費用が給与から天引きされる恐れがあります。「もぬけの殻」がベストですので、事前に準備しておくことをおすすめします。その際、鍵は郵送で返却します。

また、立ち会わなかったことで、あとから「壁紙が破れていた」など修繕費の請求がくることはありますが、もし、請求をされたら、そこから争いはじめればいいでしょう。

どうしても、立ち会いになってしまった場合は、直属の上司ではなく、人事担当者など面識のない人を指名してもいいかもしれません。

また、会社に借金がある場合も、会社を辞めることはできます。ただし、退職しても返済する必要はありますので、金額によっては、一切会わずに済ませることは難しいかもしれません。

ただ、会社から口座情報を記載した紙を郵送してもらい振り込む、あるいは現金書留で送るという方法もあります。例えば、会社から給料を前借りをしていた人は、この方法で完済します。

退職時誓約書が送られてきたら?

退職届を送ったあと、会社から退職時誓約書が送られてくることもあります。内容は、退職後の秘密保持や競業避止義務に関することです。通常は、実質的に署名を拒否できない入社時に書かせることが多いのですが、退職時に署名を求められることも少なくありません。

「職務で知り得た社内機密をもらすな」というような内容だけであれば、サインをしても問題はありません。ただ、なかには、「独立しない」「人材を引き抜かない」「同業他社に転職しない」などと書かれているものがあります。

例えば、なかには次のような条件も書かれています。

(競業避止義務の確認)

第4条
私は、本誓約書の趣旨にのっとり、貴社退職後次の行為を行わないことを約束いたします。
(1)貴社の従業員に対し、貴社と競業関係に立つ事業への就職等を勧誘すること。
(2)貴社と競業関係に立つ事業を自ら開業し、又は設立すること。
(3)貴社と競業関係に立つ事業又はその提携先企業に就職し、又は役員に就任すること。

この誓約書の場合、競業避止義務に期間の制限がまったくありません。要するに、同業他社には一生就職するなということです。

前職で培ったスキルを活かすことができなくなりますし、憲法が保障する労働者の職業選択の自由を著しく侵害する要求です。そのため、署名したとしても、裁判で争えば無効になる可能性が大きいです。

しかし、「一生」は無効になったとしても、「東京都での」とエリアを限定したものや、「3年間の」「3か月間の」といった短いスパン、具体的な条件が付記されているものは有効になる恐れがあります。

そもそもサインする義務はないので、よく内容を読んで「嫌だな」と思ったら、サインはしなくても大丈夫です。「署名する義務はないので、お断りします」と一筆書いた紙を封筒に入れて送り返します。

また、入社時に同じような秘密保持に関する誓約書に署名した場合も気をつけてください。

「入社したときに書いてもらったのと同じものだから」と、改めてサインを求めてくるケースがありますが、本当に同じものかは比較しないとわかりません。ひょっとしたら、ひそかに制限を厳しく改変した内容に変えられている可能性があります。安易に署名すると、損害賠償の責任が生まれかねないので注意が必要です。

退職届を出したあとのトラブル

退職代行の半数以上は、1本目の電話で話がついて、あとは依頼者と会社とで郵便を使って書類のやりとりをして終わります。

ごく稀に「退職届が届いていないので認めない」という嫌がらせをする会社がありますが、その場合は改めて、内容証明で退職届を送り直します。本当に会社から籍が抜けているかどうか心配なときは、ハローワークで「雇用保険の被保険者であるかどうか」を確認することができます。

書類を発行してくれない場合も心配はいりません。

離職票や雇用保険被保険者証はハローワークで、
社会保険資格喪失証明書は年金事務所か市区町村役場、
源泉徴収票は税務署、
年金手帳は年金事務所を通して入手できます。

また、代行業者の話を聞いたうえでなお、依頼者と直接連絡をとろうとするケースもあります。多いのは電話とメールですが、これは無視か着信拒否で済みます。

大概はここで諦めますが、緊急連絡先への電話が来ることもなくはありません。その可能性が高そうなときは、あらかじめ退職理由を「家庭の都合」などとして、親の理解があるかのように装っておきます。自宅訪問があった場合は居留守を使うか、ネットカフェなどに一時避難をするといいでしょう。

いちばん厄介なのが、「退職は認めるが、手渡しでないと給料は支払わない」というもので、「退職前の最後の給料だけは手渡し」といった契約の場合もあります。

個人経営のお店や派遣会社などで、途中で逃げられないよう、契約書にこの旨を記載しているところがあります。ただ、普通は、契約書も「突然辞めないでね」と釘を指す意味合いにすぎず、利用者から要求しなくてもだいたい支払ってくれます。

もし、「手渡しでないと給料は支払わない」と言われたとき、契約書に書いてなければ、労働基準監督署に通報すればいい話ですが、契約書に明記してあれば従うしかありません。「絶対に手渡しじゃないと払わない!」というのは、よほど意地悪な会社です。こうなると、給料を受け取るために出社することになりますので、代行業者を利用するメリットはほぼなくなります。

極めてレアケースですが、会社が不正を隠すために退職を認めなかったということもあります。

例えば、ハローワークに確認すると、なんと、労働者名簿に依頼者だけでなく、ほとんどの従業員の名前が記載されてない場合などです。このような会社は、雇用に関する一切の手続きを怠っているのです。
退職に際して、上司があり得ないほどに激怒する場合、あなたの身分などに関して、会社が不正をしている可能性があるかもしれません。その場合は、バレるのを恐れて高圧的な態度をとっているのです。