退職を考える際の業務の引き継ぎ

業務引き継ぎを考えることは、退職をスムーズにすることにも有効です。退職の意思表示をする際、「誰に何をどうやって引き継ぐか」を、自分なりにでも考えておくことで、会社や上司に対して、「辞める」と伝えやすくなります。

もし上司から、「業務の引き継ぎについて考えなくてはいけないから、退職は保留にしてくれ」などといわれても、「ご提案があるのですが・・・」と、引き継ぎについての提案をおこなうことも可能となるからです。業務引き継ぎをうまくおこなう方法については、次の例を参考にしてみてください。

引き継ぎ計画の策定

退職を決意したら、引き継ぎ計画を立てます。引き継ぎの範囲や期間、担当者を明確にしましょう。計画の内容は、上司と共有するようにします。自分勝手に進めることのないように注意します。

引き継ぎ相手の選定

引き継ぎ相手を選定する際には、経験やスキル、業務に適した人物を選びます。引き継ぎ相手の意欲も重要な要素です。大抵の場合は、会社から指示をされるものですが、自分なりの案も持っておくと退職の意思表示もしやすくなります。

情報共有の徹底

業務に関する情報はできるだけ詳細に共有します。文書化してマニュアル化することで、伝え忘れや漏れを防ぎます。

進捗確認の頻度

引き継ぎの進捗を定期的に確認できるようにしましょう。課題があれば早めに対応し、引き継ぎのスムーズさを確保します。

フォローアップ体制の確立

退職後も一定期間、引き継ぎ相手とのフォローアップ体制を確立します。必要に応じてサポートをおこないます。ただし、あなたの退職後にサポートをおこなうには、会社への承認が必要な場合があるので注意してください。

問題解決の姿勢

また、報告方法などの仕組みづくりにも言及しておくことが好ましいです。

業務フローの可視化

業務の流れをグラフや図にまとめ、一目で把握できるようにします。分かりやすく可視化することで引き継ぎの効率が上がります。また、引き継ぎのスケジュールも同様に可視化しておきましょう。そうすることで、上司も「どんな業務が、いつまでに引き継ぎされる」と把握しやすいからです。

質問対応の時間確保

引き継ぎ相手が質問をする時間を確保し、丁寧に回答します。不明点を解消することで不安を軽減できます。この内容も上司と共有します。

過去のデータや履歴の整理

あなたが業務を通じて経験したことを、過去のデータや履歴を整理して引き継ぎ相手に提供します。過去の経緯を把握することで、現在の業務がスムーズに進められるようになります。イメージとしては、あなたの経験してきたことをデータや書面として、会社に知識としておいていく、といった具合です。

緊急時の対応策

緊急時の対応策を明確にし、引き継ぎ相手に周知します。あなたが退職したあとも、予期せぬトラブルへの対応が円滑に行われます。また、この対応策については、関連するすべての人と共有をしておきます。そうすることではじめて、緊急時の対応策が機能するように引き継ぎがされます。

伝えるというスキルの向上

引き継ぎは伝えるというスキルが重要です。わかりやすく説明するためのコミュニケーションスキルを磨きましょう。このスキルは一生ものです。今の会社を退職したあとも、活用できる機会は多々あるでしょう。業務のスムーズな引き継ぎを目指し、試行錯誤することで、このスキルは身についていきます。

業務の優先順位の設定

引き継ぎする業務の優先順位を設定します。重要な業務から順に対応することで、引き継ぎ中であっても業務の継続性が確保されます。

現場での実践

引き継ぎは理論だけではなく、現場での実践が重要です。実際の業務に参加しながら、引き継ぎを行いましょう。また、関連する部署や人物へ、引き継ぎ相手の紹介なども必ずおこなうべきです。

フィードバックの収集

引き継ぎ相手からのフィードバックを収集し、改善点を把握します。双方の意見交換が円滑な引き継ぎに繋がります。

負担分散の考慮

引き継ぎに関する業務はひとりで行わず、複数のチームメンバーで負担を分散させることを考慮します。何でもかんでも退職するあなたが、1から10まで教えることが正しいとは限りません。あなたが担当していた業務でも、あなたよりも上手に、正確に、早くおこなえる者がいる場合、その人に指導を任せたほうが今後のため、という場合もありえます。

リソースの提供

引き継ぎに必要なリソース(情報やツール)を提供します。必要な情報やツールを用意することで、引き継ぎの円滑化が図れます。また会社で購入する必要のあるものは、上司に報告し、用意するようにしましょう。

報告書の作成

引き継ぎの進捗や結果を報告書にまとめ、上司や関係者に提出します。もし社内に、引き継ぎ業務に関する報告体制が整っていない場合、この流れを仕組み化し、今後の業務に活かしてもらうという提案も充分ありです。

ミーティングの頻度と形式

引き継ぎにおけるミーティングの頻度と形式を定めます。定期的なミーティングで進捗を確認しましょう。また、なるべく上司や関係者にも参加してもらえるようにしましょう。あなたが退職していなくなる以上、情報共有は、やってやりすぎることはありません。

業務の依存度の把握

引き継ぎ相手がどれだけ業務に依存しているかを把握し、その部分に特に注意します。あなたの業務を引き継ぐ相手も、今現状何かしらの業務を担当しているはずです。

・今受け持っている業務を今後どうするのか?
・引き継ぎ相手は、どの程度その業務から離れられるのか?
・その業務に会社全体は、どれほど依存しているのか?

などを注意する必要があります。もちろん、問題があれば、上司に報告、相談をします。

感謝と協力の意識

引き継ぎ相手への感謝と協力の意識を持ちましょう。負い目を感じる必要はありません。

しかし、あなたが退職しなければ、引き継ぎ相手はあなたの業務をこのタイミングで引き継ぐ必要はなかったのも事実です。引き継ぎ相手だけでなく、関連部署の人たちへの感謝を忘れないようにしましょう。

そうすることで、あなたと引き継ぎ相手の意識が統一されていきます。お互いの意識が共感を生み、充分な引き継ぎがすすみやすくなります。

これらの方法を実践することで、業務引き継ぎが効果的かつスムーズに行われることが期待できます。円満な退職を迎えるために、引き継ぎに時間と労力をかけることは重要です。

そして、引き継ぎに関する心配事や不安を取り払うことは、あなたの退職にもいい影響を与えてくれるでしょう。

「すでに考慮ずみ」
「すでに準備ずみ」
このように、あらかじめ手を打っていくことで、退職に関する意思表示へのハードルは、どんどん低くなっていくのです。