仕事を辞められない会社③「脅して退職を諦めさせる会社」

「人手不足だから、退職するな。どうしても辞めるなら○○するからな!」と脅迫するパターンもあります。特に労働組合がない、あるいはあっても機能していないような小さな会社の場合は、労働者の権利に関する考えがとてもあいまいで、上司と部下の力関係が何より優先されます。完全に「ブラック企業」と認定できる会社で、辞めさせないためにはなんでもアリ。非道なことも平気で行います。

脅しでよくあるのは、親を巻き込もうとするパターンです。会社を辞めることを親に知られたくない人の場合、その弱みにつけ込み「親に連絡するぞ!」と脅します。こうした場合、自分で無理やり辞めようとすると、本当に親に連絡することがありますので注意が必要です。

また、親の理解をすでに得ている場合でも、実家に何度も電話をされたら迷惑をかけてしまうため、それを恐れて退職できない人もいます。

悪質なケースとして、すでに絶縁関係にある親への連絡をちらつかせることで、退職を諦めさせようとした会社です。彼女は入社後に両親が離婚し、事情があって父親とは完全に関係を絶っていました。そのことを知っている上司が、「入社時の緊急連絡先に記載されているから、父親に連絡することになる」と脅してきたのです。

こうしたケースのように、会社に弱みを握られて脅されることが多いのですが、そればかりではありません。

よくあるのが、理不尽な損害賠償の請求です。「人手不足なのに勝手に会社を辞められると、会社が回らなくなる。損害を賠償しろ!」などと脅してくるわけです。

人手不足によって経営が成り立たないのは、経営能力の問題であって、従業員に責任はありません。実際に訴訟を起こしたとしても勝ち目はないので、単なる脅しにすぎないことがほとんどです。しかし、そのことを知らない従業員は、背負うかもしれない金銭的負担を考えて、退職を諦めてしまうのです。

Dさん(21歳・飲食)の場合

とにかく、雰囲気が最悪のお店でした。店長と本部の課長が毎日のようにもめていて、怒鳴り声が聞こえてくる。なにかミスをしたとき、怒られるのは仕方がないとは思うのですが、必ず、見せしめのように外から見えるところで叱りつけ、侮蔑めいた言葉をぶつけられる。何より仕事とはまったく関係のない家族のことを持ち出されて責められるのは本当につらいものでした。

また仕事中、急にくすぐってくるなどセクハラめいたこともたびたびありましたし、障がいのあるお客様を、閉店後、みんなで笑いものにしていたのも許せませんでした。

「辞めてやる!」と決意はしたものの、職場は慢性的に人手不足。半年前に辞めた先輩が、いまだにヘルプとして出勤させられている状態でした。先輩が何を理由に働かされているのかわかりませんが、店長はとにかく口がうまくて、丸め込んでくるタイプ。まともに辞めたいと言っても、絶対に聞いてはもらえない。先輩の二の舞になるのだけは勘弁!と思ったのです。