仕事を辞められない会社①-「退職の手続きを進めない会社」

「辞めたいのに辞められない」というのは、なんていうことがあるのでしょうか?

みなさんが思っている以上に、「辞めたいのに辞められない」人は、本当にたくさんいます。

一部の例外を除けば、労働者は自由に退職する権利を持っています。

にもかかわらず、「人手が足らない」、「業務が回らなくなる」といった、会社側の都合で、強引な引きとめをする会社があるのです。

こうした会社は、普段の業務内容やマネジメントにも問題があるケースが少なくありません。「ひどい会社だから辞めたい」けれど、「ひどい会社だから辞められない」という状態に陥ってしまうのです。

退職の手続きを進めない会社

「退職は認めるけど、まずはその前に話し合いが必要だ」などと主張して、退職をズルズルと先延ばしにするのが、このパターンです。

「話し合いが必要だ」と言いながら、「忙しくて時間が取れない」と、なかなか退職に向けての面談の機会を作ってくれないという場合もあれば、逆に何度も何度も、しつこいくらい面談の場を設けて退職希望者を疲れさせ、「こんなに面倒でつらい思いをするなら」と退職を諦めさせようとする場合もあります。

Aさん(23歳・不動産)の場合

前職は不動産会社で住宅の飛び込み営業です。常に自分の能力を上回る結果を求められ、なかなかノルマを達成することができませんでした。ノルマが達成できない僕に上司もイラついたのでしょう。毎日のように「うっとうしい」、「頭おかしいんか?」など、人格を否定するような言葉をぶつけてきて、僕はだんだん精神的に疲弊していきました。

「こんな生活が続くなら、いっそ辞めよう」と、ようやく心を決めたときには、同期は誰も残っていませんでした。なかなか決意できなかったのは、同期が辞めるとき、会議室に呼ばれて深夜まで上司から責められているのを見ていたからです。5時間も上司に追い込まれるなんて、とても耐えられない。自分は絶対にそんな目にはあいたくない。そう思って、退職代行をお願いしたのです。

面談も一対一で行われるとは限らず、複数人で取り囲んで説得しようとすることもあれば、遠く離れた本社(本部)まで呼び出されるようなケースもあります。もっとも、この程度ならまだマシです。

Gさん(25歳・事務職)

妊娠をしたので退職を申し出たにもかかわらず、いつまでたっても辞めさせてもらえません。忙しさとストレスで流産したらどうしようって、不安でした。

何度、退職を申し出ても、社長は「退職には事前の話し合いが必要だ」、「すでにシフトが出ている分は出てもらわないと困る」と説教を繰り返したのです。これだけ聞くと、筋が通っている話のようにも思えます。

しかし、社長は「事前の話し合いが必要だ」と言いながら、一向にその話し合いの場を作ろうとしませんでした。

そして、次のシフトを強引に入れ続けていたのです。そもそも最初から辞めさせるつもりなどまったくなく、ただ単に退職を引き延ばすことが目的でした。社長の言い分に従う限り、いつまでたっても辞めることはできません。

ほかにも、手続きをわざと面倒にして退職を諦めさせたり、退職時期をなんとか先延ばしにしようとする会社もあります。

一方で、急に昇給をちらつかせるなど、辞意を聞いたとたんに態度を変える会社もあります。自分にとって都合のいいときだけの優しさは信頼できません。今後も同じことを繰り返すはずです。

Bさん(41歳・看護師)の場合

看護師という仕事は大好きですし、やりがいは感じていましたが、とにかく病棟での人間関係が最悪だったんです。
常に誰かが誰かの悪口を言っている。
気に入らない後輩には徹底的にきつく当たる。
患者さんのいる前で病院への文句を垂れ流す。

そんな人たちと毎日、一緒にいるのに嫌気がさして、転職活動をはじめました。退職の意思はすぐに看護部長に伝えました。

でも、「あなたの気持ちはわかったから、いったん病棟を異動して、それでも辞めたいという気持ちが強いなら考えましょう」の一点張り。離職率を下げたくないのがみえみえで、腹立たしい気持ちでいっぱいでした。

看護師長は最初、私の意思を理解してくれていましたが、院内での立場は看護部長のほうが上。部長に説得されたのでしょう。「異動して環境が変われば、また楽しく働ける」、「それから考えましょう」と言い出したのです。

何を言っても、話が先に進みません。そうこうしているうちに、次の職場が決まったので、退職代行をお願いしました。