仕事を辞められない会社②-「独自のルールで退職を拒む会社」

退職に関する規定として、独自ルールを定めている会社はたくさんあります。しかし、ほとんどの場合、法的な拘束力はありません。

たとえば、退職の申告期限を3か月前、あるいは半年前と、かなり前に設定している会社は少なくありません。

基本的に民法では届けによって退職の意思を申告すれば、2週間後には退職は成立すると規定されています。しかし、そのことを知らない人や、知っていても上司に反論できない人は、従うしかありません。

ちなみに、こうした会社は、かなりの確率で、
「退職日を決めるのは会社だ!」
「うちではこれが常識なんだ!」
と主張します。

「法律すら守ってない人が常識を説くんだなぁ」という会社です。人事担当者でも法律の規定を知らず、就業規則や契約書に書いてあれば、なんでも有効だと誤解している人がいます。

このケースのたちの悪さは、自分たちが正義であり、むしろ、ルールを破られた被害者だと思い込んでいることにあります。

中小企業や個人商店、クリニックなどに多く、労働法の知識を学ぶ機会はなかなかありませんので、仕方のない部分があるのかもしれません。しかし、だからといって、労働者の権利をないがしろにして、いい理由にはなりません。

現実に不当なルールが蔓延してしまっているわけで、人を雇用する立場にある経営者には、雇用に関する法律とマネジメントについての、研修を義務づけたほうがいいでしょう。

「会社は家族だ!」というスタンスの会社は要注意

その意味でも、「会社は家族だ!」というスタンスの会社は要注意です。もちろん、従業員を家族の一員のように大切にする会社自体は、決して悪いことではありません。しかし、こうした会社の経営者のなかには、「家族なんだから法律とか外部の常識は関係ない」と考える人が少なくないのです。

つながりがすべてなので「家族から抜けたい」と言うと、態度が豹変して攻撃的になることがあります。

「社員全員の仲がいい」とか「アットホームな雰囲気」などと、人間関係の近さをことさら強調する会社は、高確率で地雷が潜んでいることがあります。

また、「退職届」ではなく「退職願」しか受理しない、と主張する会社も存在します。

「退職届」と「退職願」の違いはわかりますか?

「退職願」は「辞めたい」という意思を表明するもので、あくまで“お願い”です。強制力はなく、会社の都合で受理しないとか、会社が自由に退職日を決めることができてしまいます。また、いったん提出したとしても、撤回することができます。

一方の「退職届」は労働契約の解除を届け出る書類です。退職のときは、「退職届」を書くことをおすすめします。退職届を郵送で送りつけるだけでも強制力を持つからです。

Cさん(27歳・大手衣料品チェーン店)の場合

私のいた店舗は、とにかく店長が好き勝手にやっていて、本社との連携もまったくとれていない状態でした。交通費の精算も残業代の計算も「面倒くさい」という理由でなし。昨年、入籍をしたため、新しい名字に変更する申請をしたのですが、その手続きもさせてもらえませんでした。

恐ろしいなと思ったのは、1年前に退職届を出した先輩が、どういう理由か「ミーティング」の名目で毎日、出勤させられていたことです。私もこのままでは一生、辞めさせてもらえないかもしれない、自分だけでは絶対に辞められないと思うようになっていました。