仕事を辞められない会社④-「嫌がらせをして追い詰める会社」

会社が退職したい従業員に嫌がらせをして、退職を諦めさせるのは非常に悪質です。「人手不足なので辞めないでください」と丁寧にお願いするのならまだしも、嫌がらせを続けて退職を躊躇させるという最悪のパターンです。

たとえば、退職を願い出た従業員Eさんと仲のよかった同僚に、EさんとのLINEのやりとりを見せるよう、上司が強要したというケースがありました。Eさんが退職に関してどう考えているのかを調べようとしたのでしょう。

直接的な引きとめではありませんが、Eさんにしてみたら、会社に残る同僚にいろいろなかたちで迷惑がかかるかもしれないと心配になります。結果、Eさんはなかなか辞めることができませんでした。
嫌がらせを受けたとしても、本人が心折れることなく「辞める」という意思を持ち続け、根気強く面談の機会を要求し続ければ、最終的には退職が決まることもあります。

しかし、正式に退職日が決まったとしても、最終出社日までの間、いじめやハラスメントを繰り返すような職場もあります。

業務の引き継ぎがありますから、それまでやってきた仕事以外の作業が生じるのは当然です。しかし、退職が決まったとたん、上司の態度が冷たくなり、適当な理由をつけて、まったく意味のない雑用ばかりをさせたり、実質的に、就業時間中、ただ立ち続けていることを命じたりしました。

毎日毎日、「お前のような人間はどこに行っても通用しない」などと言われ続け、耐えきれずに退職代行を使って、退職日を早めた人もいました。また、「辞めるんだったら、お前が代わりを探してこい。できないなら、損害を負担しろ」と要求された人もいました。

最終的に、そんな会社から逃げられたとしても、受けた心の傷は一生残ります。退職代行を利用すると、会社とのやりとりは原則、郵送になります。直接会うことは基本的にはありませんので、こうした嫌がらせから逃れることができます。

退職代行には心のダメージを回避する保険的な側面もあるのです。

こうした嫌がらせをするような会社では、普段から従業員が上司の言動に怯えて萎縮してしまっています。恐怖で支配されているようなもので、簡単に言いなりになってしまうため、法的に認められている権利もなかなか行使できません。

男性上司のセクハラが原因で、うつ病になってしまった女性が、退職するために診断書を提出したところ、「そんな紙切れどうでもいいから、破り捨てて、早く仕事をしなさい」と当の上司に言われたということもありました。

労働基準法を守っていない会社ほど、従業員に高圧的な態度をとる傾向があります。サービス残業の多さを理由に仕事を辞めようとしたら、「責任感はないのか?」と上司に追い詰められるというのはよくある話ですが、「雇用者の責任を果たしていないくせに、労働者にそれを求めるの?」と思ってしまいます。

そういう会社に限って、「うちは無理に引きとめたりはしていません」と言います。