民間業者に退職代行を依頼する場合の問題点

退職代行サービスは、弁護士が所属していない民間の業者が運営しているサービスと、弁護士が行っているものの2種類があります。

民間業者には、リーズナブルな費用で退職代行を請け負うことで、多くの依頼者を集めています。

しかし、民間業者には様々な「できないこと」が存在します。民間業者の最大の問題点は、「代理権がないこと」です。代理権がないことによって様々な問題が出てきます。

民間の業者を利用する際の注意点

1.「会社を退職する」という一番の目的を果たせない恐れがある

2.有給休暇の請求を放棄せざるを得ない場合がある

3.未払い残業代請求や慰謝料請求ができない場合がある

1.「会社を退職する」という一番の目的を果たせない恐れがある

代理権がない民間業者に依頼することで、「会社を退職する」という当初の目的が果たされない恐れがあります。弁護士法では弁護士の資格を持たない者が、報酬を受け取って代理人となることが禁じられています。したがって、民間業者は正式には代理人ではありません。

ですので、会社側が「あなたたちとは話せません」といえば、民間業者は会社と話すことができなくなるのです。もし仮にその状態が続くと、無断欠勤とみなされて、懲戒事由になることもあります。

また、民間業者による退職代行サービスでは、離職票などの必要な書類が送られないこともあります。いくら金額が安かったとしても、本来の目的を離せないのでは本末転倒です。

2.有給休暇の請求を放棄せざるを得ない場合がある

次に問題となるのが、「有給休暇の請求を放棄せざるを得ない」という点です。民間業者は代理権を有していませんので、会社側が有給休暇取得を拒否した場合に交渉することができません。だからこそ多くの民間業者は、「有給休暇の取得は諦めるように」と説明します。

しかし、これから会社を退職される方にとって有給休暇は重要です。その分は会社に在籍できるのですから、その間は給与も受け取ることができるためです。そうすれば、ゆとりをもって転職活動を行うこともできます。

3.未払い残業代請求や慰謝料請求ができない場合がある

民間の業者は弁護士ではありませんので、未払い残業代の請求交渉やパワハラ・セクハラなどの慰謝料請求を行うことはできません。退職代行をご依頼する際、多くの方が未払い残業代問題を抱えています。残業代を全額支払うことは企業の義務ではありますが、支払わない企業は多数存在します。

しかし、残念ながら民間の業者ではこれらの問題を解決することができない場合がありますので、「退職だけして泣き寝入り」という状態になってしまうことがあります。

なお、弁護士は未払い残業代の請求やパワハラ、セクハラ等の慰謝料請求については、「成功報酬」という形で、報酬を受けるのが普通です。相手方から未払い残業代や慰謝料を受け取ることができた場合のみ、その中から報酬を受ける形式ですので、費用を持ち出すことなくご利用できます。

ただし、法律事務所によっては、成功報酬制の場合もあれば着手金が必要な場合もあります。法律事務所に退職代行とこれらの請求を同時に依頼する場合は、報酬の支払い方法、タイミングについて確認してみましょう。